ハリとはどのようなものだろうか?いつごろ、誰が始めたのだろうか?
効くとすれば、どのようなメカニズムで効くのだろうか?
どのような病気に効くのだろうか?
日頃患者さんとの会話の中で、このような疑問を持っておられる人の実に多いことを
感じます。そこでできるだけわかりやすくその疑問にお答えしたく思います。 |
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Q. ハリはいつ頃、誰が、どこで始められたのでしょうか?
A. ハリは、いつ、だれが始めたというような、はっきりしたものではありません。だれでも痛いところが
あったり体の調子が悪いと、皮膚をさすったり、たたいたり、圧迫したり、突いたりします。肩が凝る
とハリでも突き刺したい、という気分に誘われることがあります。これは人間の体を守ろうとする本能
です。そのようなところからハリ治療は自然本能的に発生し、発達してきたものです。古代からどこの
地域においても行われていたと思われますが、はっきりした形として確立されたのは中国の黄河の流域
で、紀元前1000年頃から段々さかんになったといわれています。
日本に伝来した時期には諸説ありますが、仏教とともに紀元500年代に入ってきたという説が有力です。
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Q. ハリは「痛い」というイメージがありますが、痛くないのでしょうか。肝炎など感染症の心配は?
A. 治療に使用するハリは細く弾力があり表面も滑らかで、ハリ先の角度も体になじみやすく、痛くないよ
うに作られています。しかし、生体は皮膚で包まれ、皮膚には知覚神経が網の目のように巡っています。
生体は異物を拒否しようとします。ハリは生体に対し異物です。知覚神経を刺激しますと、痛くてハリ
を刺入することができません。しかし、まっすぐ知覚神経の網の目をくぐるように刺入いたしますと、
全く痛くありません。特に私たちの方式は、力で差し込むようにするのではなく、生体の反応を診なが
ら沈めるように刺入いたします。無理なやり方を致しませんので痛くありません。
ハリは使い捨てで、一度使ったハリを次の人に使うことはありません。新しいハリを十分消毒して使用
いたしますので肝炎などの感染症の心配はありません。
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Q. ハリはどのようなメカニズムによって効果が現れるのですか?
A. ハリを刺入しますと皮膚、皮下組織、筋膜、筋肉と入っていきます。その中には血管や神経、リンパ管
リンパ節、結合組織などあらゆる組織が含まれています。ハリはそのすべての組織に影響を与えます。
一局所に与えた刺激は、その場所だけでなく反射的に脳の中枢や内臓など遠隔部にも伝わります。つま
りハリの効果は複合作用です。
その中でも私たちは体液循環を最重要視しています。体液とは全身の組織を満たしている液体のことで
これによって全身に栄養を供給し、老廃物を排泄し生命の維持活動に関与しています。
きれいな血液すなわち動脈血は心臓から動脈管を通って毛細血管に行き、そこから栄養を含んだ液体が
組織に露出し、それを取り込んで細胞は生きています。細胞は新陳代謝によって老廃物を排泄し、老廃
物を含んだ液体は静脈系とリンパ系に吸収されて排出されていきます。リンパ系も最後に静脈系に合流
します。動脈系が上水道、静脈系・リンパ系が下水道のようなものです。同じ下水道でも比較的汚れの
少ない雨水を集める道と、汚水を集める道とがありますが、汚水はいったん処理場を通ってから雨水と
合流します。身体の中でこの汚水を集め、処理する役割を担っているのがリンパ系です。

ところが何らかの原因でリンパ系の吸収力が悪くなりますと、組織に老廃物が蓄積することになります。
下水溝が詰まって汚水があふれるようなものです。この場合、ハリをいたしますとリンパ管の吸収路が
開き、組織に溜まっていた老廃物が排泄されます。
水分は上流から下流、圧の高いほうから低いほうへ流れます。下水の詰まりが取れ、汚水が排泄されま
すと組織の圧が下がり、上流から新鮮な液体が流れ込みやすくなります。体液循環が順調に働いていれ
ば、健康を維持することができるのです。ほとんどの病気は体液の循環障害を起こしています。ハリは
それを解消し正常な組織に戻します。
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